Think like a man of action, act like a man of thought.
とはベルクソンの言葉。
(英語ではなぜ仏語と順番が逆になるのだろう...)
思考停止せずにスタンスをとれ、スタンスをとってもそれを疑え、と。
トーゴにいたときに、働いていたCILSIDAというNGOではファンドレイズとか翻訳とか啓発活動とかいろいろなことをやったのだけど、印象に残っている活動のひとつが、コミュニティ内の家を一軒一軒訪ねて、若くして妊娠した女の子たちの生活環境についての調査を行ったこと。
家族構成はもちろんのこと、その女の子の職業は何かとか、家計を支えているのは誰かとか、妊娠中の検診はしているか、しているとしたらどこに(公営のヘルスセンターか、私営のお医者さんか、伝統医か、とか)行っているか、とかを、一軒一軒インタビューして回った。総勢30人くらいのスタッフで2週間ぐらいかかった。家庭訪問後は、そのデータをもとにレポートを作った。
その前にいたNGOの活動がひどかったから(私腹を肥やすためのスケープゴート以外の何ものでもなかった)、トーゴのNGOでもこんなちゃんとしたことやってるんだ!しかも、感覚じゃなくちゃんとデータに基づいた活動しようとしてる!ととても感動した。あと、本当に炎天下の中何日間もひたすら町の中を歩き回ったつらい記憶が"今ではいい思い出"ってやつになってる。
インタビューの内容は数字にできることだけじゃなくて、時には人生相談みたいなことになって何時間も話し込んだりもした。
中には、14歳ぐらいの少年少女がやっちゃって、子どもができちゃって、親はガン切れで、どういういきさつか知らないけど刑務所沙汰になりそうで、そもそもその少年少女が家から勘当されそうなのに赤ちゃん産んだら育てるなんてもっての外、なんていう、(刑務所のくだり以外は)日本にも普通に転がっていそうな話があったり。
他にも婚前交渉がらみのトラブルが多かった。その人の宗教にもよるけど、婚前交渉は社会的にあまりいいこととはされていないらしく(そこに社会通念と現実とのおおきな乖離がある)、そのままデキ婚になればめでたしめでたしだけど、妊娠させた男の方が責任を取らずに逃げちゃうって話もたくさんあった。それで母親の方の家族で育てているけど、学校の給食のお金がないとかもざらにあった。
トーゴでは国によるセーフティネットは(皆無ではないにしろ)整っていないから、こういう状況に対してはCILSIDAのような数多のNGOがカバーしている部分が大きい。というか、少なくとも、そういうことがおそらくNGOには期待されている。
この度、CILSIDAのDirecterのAntoine(アントワン)から連絡が来て、この若いお母さんたちのための生活支援のプロジェクトをやりたいと。
GlobalGivingっていうプログラムがあって、世銀の元役員の人たち(ひとりは日本人)が立ち上げたらしいんだけど、草の根活動の現場と世界の善良なる市民をつなげるための仕組みということらしく、サイト上にあるありとあらゆるプロジェクトから、自分の関心に合うものを選んで、好きな額を寄付して、進捗状況のアップデートを受け取れるらしい。
そのGlobalGivingに、CILSIDAが若い母親サポートのプロジェクトで応募した。9月30日までにそのサイト上で$4000のファンドレイズをすることができれば、その後もGlobalGivingのサイトに掲載される権利を得られて、プロジェクト運営に必要なさらなる寄付を募れるということらしい。
ということで、Rena, 先進国の友達に寄付を呼びかけてくれ、と。
うーん。と、困ってしまった。
基本的に、私は、「寄付」ということに対して極度に懐疑的なのです。
最近邦訳が出たらしいDambisa Moyoの"Dead Aid"でも、援助は依存体質を助長させるだけで本当に彼らの成長にはつながらないものが多い、むしろ成長が疎外されている、的なことを言っている。
だけど、現場にいる彼らにはそんなこと言えないわけです。
はるか遠くの人間がどんな理屈をこねていようと、現場は今この瞬間にもそこにあって、その体質そのものを変えることをしているという自負がない限り、その体質の内部におかれている人に批判なんて言えないわけです。たぶん、理解してもらえないだろうという諦めも多分にありつつ。
私は現場に寄り添った人になりたい。
だから、現場のわりきれなさ、汚さから目をそらして、キレイに整えられた理論を言っている人にはなりたくない。現場のわりきれなさや汚さを直視しつつ、かといってそこに迎合することもなく、立ち向かっていける人になりたい。
それが、"agir en homme de pensée et penser en homme d'ation"の意味だと思う。
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